中学受験で成功する「黄金法則」とは

1.筑波大駒場の求める生徒像

~いかに興味をもって理科を学習するか~

筑波大駒場の理科の問題はコツコツと受験勉強をきちんとしてきたかをみる反面、深く広い知識と理解を要求する問題が出題されます。

その根底には“与えられた学習”ではなく、テキストの範囲を越えて、自主的・自立的に学習する生徒を求める理念があります。

筑波大駒場の教育理念は、生徒の自主性を重んじ、育むことです。そこから、「挑戦・想像、貢献」という行動が生まれてきます。

筑波大駒場を目指すのであれば、自主性を身につけないければなりません。そのスタートは、「理科に、いかに興味をもって学習するか」です。

自主的な学習とは以下の通りです。

  • 理科に興味をもつこと
  • 自然現象に対して不思議と感じること
  • どうしてそうなるのかを理解できるまで、自分で考え、質問し、調べること

こうして広い知識と根本的な考え方の理解を深めることができます。

では、どうすれば自主的に学習をするようになるのでしょうか。

2.時期別学習法

~早期における通塾の弊害~

小学校1年生の時から大手塾に通わせるご家庭もあるかと思いますが、これでは、自主的な学習意欲はわきません。塾はテキストを用いてその範囲を教えるだけです。

つまり、“与えられた学習”であり、“自分の興味に導かれて行う学習”とは逆行します。

また、生徒の頭が育っていない時に難しい中学受験の問題を行うため、“解法を暗記する学習”に陥ってしまうケースが非常に多く、小4くらいまではそれで点数が取れていても小5の後半から偏差値が勢いをつけて落ちてゆく生徒を何人も見ています。

こうなってしまっては、“解法の暗記”で解く学習姿勢を変えることは非常に困難で、取り返しがつきません。

中学受験というと、「塾の通わせる」「問題集をやらせる」というイメージが強いと思いますが、それだけではなく、学科に対する興味や学習に対する意欲をひきだす環境を作ることが大事です。

特に低学年は、お子さんの興味にそって親御さんが導いてあげることが重要です。

  

小学1~2年生

~まずは、理科に興味をもたせる~

「夜一緒に星を見たり、星座の神話の本を買ったりして興味を持たせるようにしているのですが、なかなか興味を持ってくれなくて・・・」というご相談をよく頂きます。

興味というのは、本人が理由なく、自然と湧き出てくるものであり、強制されて出てくるものではありません。

子供が興味を持っていないにもかかわらず、星を一緒に見ても興味はわきません。

それよりも子供の精神状態に添うことが重要です。

散歩をしている時に“植物”に興味を持たせようとして、「この花の名前は?」 「都会で見ることができるタンポポはセイヨウタンポポでそうほいがそっくりかえっていて・・・」と話をして興味を持ったらしめたものですが、興味を持たなかったら話すだけ無駄ですからやめましょう。

逆に、子供が夜空に輝く月を見て「マンションの屋上で月を見たい」といってきたらチャンスです。忙しいとは思いますが、できるだけ応えてあげましょう。こういうときは月に関する知識を話してあげると吸収がいいので、「これから月はどっちに動くと思う?」などと質問をしながら動きを観察します。このとき方角も教えると理解がすすみます。

~親御様の役割が重要~

この時期は親御様の役割が重要な時です。

親御様の役割は

  • 興味を持ちそうな話をする
  • わからないことを質問する
  • 一緒に調べる、調べる方法を教える
  • ノートにまとめてさせる

親御様も少々学習して頂いて、お子さんが興味を持つような話をしてあげるのがいいでしょう。お風呂の中で話すのが最適です。

筑波大駒場の知識問題では“生物”の分野が多いので、

  • ブルーバックス 「親子で楽しむ生き物のなぞ」 著者: 内山博之
  • 青春出版社 「進化の不思議」 なるほど科学探検隊(編)

「イルカの脳は睡眠時でも半分起きていて、寝ている間でも呼吸をする」とか「紫外線をあてるとモンシロチョウのオスは真っ黒に見える」など面白い話題が多い書籍です。

~子供の話を良く聞き、質問する~

子供の話や疑問を聞くのが苦手、という方は多いと思います。大人からすると些細な疑問かもしれませんが、そのような疑問が理科の出発点です。

できるだけ子供の疑問を大事にしてあげて、大人が全部答えるのではなく、自分で調べる方法を教えてあげましょう。

「一緒に図書館に行って調べてみよう」

でもいいですし、図鑑を買ってきて調べてもいいと思います。

ただし、百科事典などをそろえて「さぁ読め!」と子供に強制する方もいらっしゃいますが、これは逆効果です。自分で見つけ、自分でそろえる楽しみを奪ってしまいます。

一緒に本屋に行って子供にどの図鑑がいいか、選ばせるのがベストです。

図鑑は特に有効です。知識の宝庫であり、中学受験の範囲を明らかに越えており、子供にわかりやすく書かれています。小学館や学研のものなど参考にしてみてください。

調べた後はさらに理解を深めるために大人から質問してゆきます。

  • 「ミツバチのはたらきバチは全部メスなんだって、どうしてだろう」
  • 「どうして月は形が変わるんだろう」
  • 「クロダイの子供は全部オスなんだって、なんでだろう」

このようにしてゆくと疑問が疑問を生み、自分で考える力がついてゆきます。正解がわからないことも多いのですが、それでもいいのです。何かを疑問に思い、それについて自分で考え、調べてみる、という自主的な行動が重要です。

子供の話を聞くのは面倒とお思いの方もいると思いますが、子供の疑問を大事にし、それにできるだけ応じることによって知的好奇心を育てていく、筑波大駒場の教育方針にも合致する対応の仕方です。

~好きなことを応援する~

強制してやらせるのは自主性を奪います。お子さんの興味に添うことが重要です。「そんなことを覚えても中学受験に役に立たない」ではなく、好きなことはどんどんやらせましょう。

昆虫が好きなら、昆虫のことを何でも知っている域まで高めるように応援します。好奇心に導かれた知識欲・理解欲を発揮します。

ただし、子供の観察眼は未熟ですから、細かいところまで注視できません。そこを大人の視点で補ってあげます。

  • 「カブトムシとトンボの飛び方はどう違う?」
  • 「完全変体と不完全変態、なんで違いがあるんだろうね」
  • 「トンボの飛び方と飛行機の飛び方はどうちがうんだろうか」

など他分野と結びつく、質問もいいと思います。知識の範囲が大きく広がります。教えてしまうよりも、自分で考えさせる方向で質問してゆくのがポイントです。

このように、この時期で大事なことは、理科に興味を持たせ、自分で考え調べる楽しさを体験することです。

小学3~4年生

~生物の「知識ノート」をつくろう~

この時期から少しずつ、中学受験の学習に入ってゆきます。

理科の分野は「生物」「化学」「地学」「物理」に大きく分かれますが、この時期は知識を吸収するには一番いい時期ですので、生物を中心に学習してゆきます。

「02■筑波大駒場(理科)の合格戦略」(リンク)にも書きましたが、筑波大駒場は、中学受験全般の標準的問題に加えて深く広い生物分野の知識問題が出題されます。この点を強化するのがこの時期です。

大手塾のテキストの生物分野に掲載されている昆虫、植物、動物、その他生物、特に身近な生物をリストアップし、1つ、1つその生態をまとめて、ノートを作ってゆきます。

残念ながら、いいテキストはなく、1つ1つ図鑑やその他で調べてゆくしかありません。、親御さんがインターネットなどで協力してあげてください。

項目や書き方の例については、「02■筑波大駒場(理科)の合格戦略」に書きましたのでこちらを参照してください。

~実物を使って基本的知識を学ぶ~

生物以外の分野については、難しい問題を解く必要はありません。頭がそこまで育っていないのに難しい問題を行うと、5~6年生になって、その悪影響がでてきます。

正解を出すことだけに集中してしまい、解法を暗記して解くようになってしまいます。このような学習方法が習慣として身についてしまった生徒は、4年生では高い偏差値を維持していても、5年の後半あたりからどんどん落ちてきます。

このような“解法暗記”の学習法ではなく、是非実施してほしいのが、実物を使った学習です。豆電球でしたら、実際電池と豆電球をいろいろつないでみて、明るさがどうなったか調べてみたり、川原や渓谷の石を比べてみたり、月はどの方角から出てくるのか、こういった理科の基本的な“常識”を実物を使ったり、見たりしながら体感することが重要です。

~4年の後半から学習姿勢を整える~

4年生の後半で是非やって頂きたいのが、“適正な学習姿勢を身につける”ことです。点数が高くても、この学習姿勢がきちんと習得できていないと

適正な学習姿勢とは

  • 字を丁寧に書く。
  • 図を書く(生物、実験器具、天体、その他テキストに掲載されているもの)。
  • 問題文を丁寧に読む。
  • 問題文の重要なところにマークする(「全て選びなさい」「間違っているものを選びなさい」など)。
  • 用語は何度も紙に書いて覚える。

これを徹底してください。

小学5年生

この時期は4年生までの知識の整理と定着を行い、さらに、“どうしてそうなるのか”という根本的な考え方を学ぶ時期です。

~知識の整理はどうするか~

4年生までの学習や作ってきた生物ノートを何度も読み返し、今まで覚えてきた知識を再確認します。

それと同時に

SAPIX 「コアプラス」

を用いて、中学受験に必要な知識を身につけておく必要があります。同じSAPIXで「新分野別」もありますが、高いですし、全分野セットでないと売ってませんので、無理に買う必要はありません。

四谷大塚 「四科のまとめ」もありますが、生物の分野は使えますが、他に分野は使いずらいです。日能研では「メモリーチェック」をすすめていますが、これでは不十分です。

知識はやらないと確実に忘れます。6年生最後まで何度も繰り返して、常に答えられるようにしておきましょう。

~根本的な考え方を習得する~

5年生で一番重要なことは“根本的な考え方”の学習です。

4年生までは暗記で点数がとれていたので、そのままの学習法を続けてしまう生徒さんをよく見かけますが、5年生になったら学習法を変えないといけません。4年生までの暗記だけでは高い偏差値を維持するのは困難になっています。

筑波大駒場では、気象が出題されますので、気象を例にとってみてみましょう。

  • なぜ風はふくのか
  • 高気圧や低気圧はなぜ生まれるのか
  • 季節風はなぜ吹くのか
  • 雲はなぜできるのか
  • 雲はなぜ落ちてこないのか
  • 前線とは何か
  • なぜ冬は日本海側と太平洋側で天気が違うのか
  • 梅雨の時期はどうして雨が長く降るのか

などなど上げたらきりがないのですが、このようなことをきちんと理屈をもって理解することが必要です。

わからなければ先生にどんどん質問しに行きましょう。

参考書では下記のものをおすすめしています。

   誠文堂新光社 「新しい教養のための理科 応用編 1、2」

問題などはありません、各分野の根本的な考え方をきちんと説明しています。

5年生の学習姿勢は4年生に挙げたものに加えて“根本的な理解すること”です。親御様は是非チェックしてみてください。これらの学習姿勢を5年生で身につけて、学習に臨んでいれば6年生でかなり楽になります。

~日々の学習に復習計画を~

5年生では重要な単元ばかりを学習しますので、5年生前半は、2週間~1ヶ月の復習を日々の学習計画に予め組み込んでください。

「範囲のないテスト対策はどのようにするのがいいのか」という質問をよく受けますが、この既習単元の復習を日々行ってゆくのが大きな対策になります。

小学6年生前半:夏まで)

~7月前半までは、全範囲の総復習~

中学受験全範囲を総復習してください。4年生~5年生までの各単元の基本的知識、根本的な考え方を確認し、今までの模試やテキストの中で、できなかった問題、理解がすすまなかった問題をもう一度解きなおしてください。

7月までに総復習をしておくと、塾の夏期講習を有意義に活用することができます。

塾の夏期講習はどちらかというと全範囲を問題演習形式で行いますので、詳しい解説はしてくれません。それでも、7月までに総復習をしておけば、きちんと理解できるはずです。

理解が進まない単元は、すぐにテキストを遡って復習しましょう。わからなければどんどん先生に質問して、苦手な単元をなくしておいてください。このような状態にしておけば、6年生後半から志望校対策に専念できます。

~夏休みは過去問の進め方のスタイルを掴んでおく~

夏休みに是非やっておきたいのが、過去問です。ただ過去問に触れてみるとか、とにかくできるだけ多く解く、というのではなく、目的は、今後、過去問の学習を進めるときのスタイルを掴むことです。

秋以降になると、どうやって過去問のとり組むか、試行錯誤している時間はありません。夏休みに、そのスタイルをある程度決めておき、定着させることが必要です。

過去問は、とにかく1問1問を深めることです。具体的な取り組み方は「■筑波大駒場への合格戦略」や「■筑波大駒場の合否を分けた一題」に詳しく載せましたので、こちらを参照してください。

小学6年生(後半)

過去問と塾の学校別強化コースが中心になります。過去問は、夏休みに習得したスタイルで進めます。塾の学校別強化コースも同様です。

通常授業はできるだけ授業で理解するように努め、家庭学習は志望校対策中心ですすめます。過去問は後何回できるのか、学校別教科コースの教材にはどれだけの時間が使えるのか、を見極め、必ず、いつなにをするのか、きちんと計画を立てて学習してください。

塾の学校別強化コースで扱う、塾オリジナルの教材は非常に充実した内容ですが、塾の講義が追いつかないのが現状のようです。通常授業の宿題や復習で時間もあまりないと思いますが、塾の学校別強化コースの教材の問題は1つ1つ流さないできちんと解いてみてください。

量を多く解くより、1問を深めることが重要です。教材が多い場合は取捨選択して、絞るってください。すべてやろうとすると結局何も身につかないままで終わってしまいます。

学校別の模試も積極的に受験しましょう。

  • 学校別サピックスオープン
  • 四谷大塚 学校別判定テスト

復習の仕方は過去問と同じです。結果よりも何が足りないか、どこが原因か、をよく分析し、それを克服するための復習が大事です。結果が良かったからと言って安心もできません。

この時期に開催される、大手塾の公開テストの対策を気にされるご家庭がありますが、対策は必要ありません。

この時期は、志望校に向けた対策に重点を置いてください。入試までに過去問をどれだけできるのか、学校別教科コースの教材をいつどれだけが実施するのか、計画を立ててそれに集中するのが大事です。