中学受験で成功する「黄金法則」とは

女子学院中の傾向分析

難問はほとんど出さない学校です。ここ数年やや難化していましたが、今年はかなり易しい問題でした。基本的な知識を問うような問題も多く出題されています。

6年夏の段階で解いたとしても、ある程度(50~60点)の点数が取れるのではないかと思います。しかし、それ以上の点が取りにくいのが女子学院なのです。なんとなく解いてもある程度までは出来ます。が、合格点に達するには、なんとなく解いているままでは絶対に及びません。

正確に理解していること、確実な知識があること、そしてそれを結びつけて使いこなす力を求められています。また、問題文に独特のひねりがあります。慣れないうちは「問題の意図」を読み取るのに苦労するでしょう。

論理的、総合的な思考を要求する問題

①グラフ

読み取る

「時間を横軸にとった気体発生のグラフ」が女子学院の入試問題では、よく登場します。

例:H22Ⅳ-3 H19Ⅲ-3 Ⅳ-2 H18Ⅲ-2 H17Ⅱ-2 H14Ⅲ-2

一般的な気体発生のグラフは図1のようなものです。

液体の量を一定として横軸:固体(金属や石灰石)、縦軸:気体の発生量

もしくは固体の量を一定として、横軸:液体(塩酸や水酸化ナトリウム水溶液)、縦軸:気体の発生量

グラフは直線で、一点で折れ、その点(過不足なく反応する点)を利用して反応量を求める問題が典型的です。

これに対して図2が女子学院でよく見られるものです。

縦軸:気体の発生量 は同じですが、横軸:時間 になっていて、グラフの形も異なります。

(図1、2)

ここに女子学院の先生が求める力が端的に現れています。計算処理の道具としてグラフを用いるのではなく、グラフそのものを考察する力が欲しい、ということでしょう。

グラフの形からどんなことがいえるのか、条件を変えたらどう変化するのか、本質の理解とそれを発展させる思考力が必要です。

グラフを描かせる問題や正しいグラフを選択する問題もあります。

上位校の中では計算問題は少なめです。高度な計算処理力は求められていません。しかし、標準レベルの化学計算、物理計算は当たり前のように出てきます。ひとつひとつは難しくありませんが、総合的な力を求めていると思われます。

②具体的な数値のない計算問題

主に力学で、具体的な数値がないけれども計算的な考え方をする問題が見られます。

H24Ⅱ-3 H23Ⅳ-134 H21Ⅳ-2 H20Ⅲ-2

簡単な例を挙げます。

「てこの力点にかかる力を小さくするには、支点から作用点までの距離を[短く]、支点から力点までの距離を[長く]すればよい」

※[ ]内を考える。というようなものです。

具体的な数値があればその値を求めるのは簡単な問題ですが、文や図だけで大小を表すと考えにくくなる。小学生は成長過程にありますので、抽象化されると途端に分からなくなる子もいます。そこを狙ってきます。抽象化に対応出来る論理的思考力、もしくは自分で具体的な数を決めて確認する応用力があれば対応できます。

迷わせる問題

①選択問題

女子学院の選択問題は基本的に「すべて選ぶ」です。親切に「1つ選びなさい」「2つ選びなさい」「すべて選びなさい」などの指示がある場合もあります。しかし何も書いてなかったら「すべて」です。かなり迷わせるような選択肢が多く、苦労することと思います。なんとなく解くのでは合格点に届かない理由のひとつがこれです。記述問題より選択問題の方が難しいといってよいでしょう。

③穴埋め問題

空欄に言葉を入れる問題です。一見簡単そうに見えます。実際に簡単なものもかなりあります。しかし、問題の意図を読み取るのが難しい問題も多く出題されています。受験生の言葉を借りれば「何を答えていいか分からない」。実は高い読解力が求められているのです。また、詳しい知識が求められる問題もあり、あなどれない出題形式です。

ABC問題(○×△問題)

女子学院の理科といえばこれでしょう!まず実験が行われ、

実験の結果から正しいと判断できるものはA(○)

違っていると判断できるものはB(×)

この実験結果からでは判断できないものはC(△)。

実際には正しいもの(知識で正しいと知っているもの)でも実験から判断することができないものはCです。

これに気付くところまでは女子学院志望生なら当たり前!というレベルでしょう。はっきりA、Bが判断できる問題ももちろんあります。しかしこの問題は奥深いのです。結果の意外なところからAやBだと判断できる場合があるのです。グラフ、結果のさまざまな要素に着目し、判断しなければなりません。ここでもやはり論理的、総合的な思考力が求められています。

4.記述、作図

①記述

「実験結果の理由」「実験方法」を問う記述が出題されています。女子学院志望レベルな何回も習って覚えてしまっているようなものが多く、ここで苦労することはないでしょう。

②作図

実験方法を問う問題に、実験装置を作図させるものが多く出題されています。標準レベルから、かなりの難問まであります。

例:
H23Ⅰ-4 H22Ⅲ-2 H19Ⅲ-2 H18Ⅲ-2 H14Ⅱ-4
グラフの作図に関しては、1-①に述べたとおりです。
例:
H18Ⅲ-2 H16Ⅳ-7

最後に分野別の分析をします。全分野から出題されていますので、勉強しなくてよい単元はありませんが、頻出の単元ははっきりしています。

[生物] やや難

  人体(消化)、動物(昆虫)がよく出題されています。やや詳しい知識問題、動物の実験問題、読解問題が出されています。

[地学] 標準

  太陽、月、星、気象、地層、どれも出題されています。この分野に関してはそれほどひねりはありません。難度も標準レベルで、塾のテキストに出てくるよう内容が普通に出来れば対応出来るでしょう。

[化学] 頻出、標準~やや難

  女子学院志望なら化学を得意にしておきましょう。気体、水溶液、熱、三態変化、溶解、燃焼、すべてよく出題されています。1.にも述べましたが、この分野への深い理解が必須です。

計算問題は多くありませんが、標準的な計算は出来るのが前提の出題です。グラフ選択やグラフの作成の際に、計算しなければいけません。

また、数値を答える計算問題の場合は、使うべき数値がグラフや表よりも、問題文の中にあることが多い、という特徴があります。これは、わざと見つけにくくし、受験生に自分で抜き出して整理する力を求めているのでしょう。

物理 標準~やや難

女子学院の物理といえば「運動」でしょう。特に球を転がす問題が頻出です。

電流(発熱、電磁石を含む)もよく出題されています。

光はしばらく出題されていなかったのですが、一昨年出題され、物理分野で出題されていないものはない、といってよい状態になりました。

力学計算はやや少なめですが、化学計算同様、標準的な計算は出来るのが前提の出題になっています。

日常使う道具や玩具(モーターと輪軸を使った車など)に応用した問題が多く出題されているのも特徴です。

  生物 化学 物理 地学
H24
蒸散
数値なし計算
穴埋め
計算

中和
計算
3つの「とける」
記述

熱、三態変化
○×問題

電流
計算
作図(グラフ)
知識

惑星の動き
穴埋め
計算
作図
H23
人体(消化)
穴埋め
読解
詳しい知識

気体/燃焼
ABC問題
作図(実験)
計算(難)

運動
ABC問題
数値なし計算

天気
グラフの読み取り
穴埋め
H22
昆虫
穴埋め
読解
詳しい知識

気体
作図(実験)
詳しい知識

熱/三態変化
ABC問題


穴埋め

太陽
穴埋め
作図
H21
植物
詳しい知識

気体/燃焼
迷いやすい問題
詳しい知識

輪軸
計算問題(易)
数値のない計算

地震
穴埋め
H20
動物(目)
穴埋め

顕微鏡の使い方
数値のない計算
Ⅳ-1,2
水溶液
Ⅳ-3
浮力
計算問題

電流

H19
H18

植物(実験)
穴埋め

人体(消化、血液)
穴埋め

溶解度/水溶液
計算問題(難)
作図(実験)
グラフの読み取り
ABC問題

三態変化
穴埋め
迷いやすい問題

気体
計算問題(易)
作図(グラフ)
作図(実験)

運動
穴埋め
計算問題(易)
作図(実験結果)


穴埋め
迷いやすい問題

地層
穴埋め
H17
人体(消化実験)

燃焼
グラフの読み取り
ABC問題
迷いやすい問題

運動
計算問題(標準)